タツノオトシゴ 珊瑚のおはなし タツノオトシゴ

〜 海の中の森 〜

 

珊瑚とは?

 

珊瑚は無脊椎・腔腸動物の一種で、イソギンチャクやクラゲの仲間。

動物だからといって、“サンゴ”として通常イメージする物体が動くわけではありませんw

石のようなさまざまな形をしている物体は、サンゴという生き物の家 = サンゴ群体 であり、

本体である サンゴ群体の住民 が、本当の意味でのサンゴ = サンゴ固体

サンゴ固体は目にやっと見えるかどうかというちっちゃな生物で、ポプリ型 と呼ばれている。

 

世界中で生息するサンゴは 400種類 ともいわれ、種類が違えば、それぞれ違う形の家を作る。

ひとつのサンゴ固体がでっかい家をつくるのはなく、アパートのようにたくさんのサンゴが集まって生活し、

そこに 褐虫藻 とよばれる、有孔虫などの石灰質を作る性質のある生物が同居して、あのような大きな構築物を形成する。

サンゴ一匹一匹の身体的特徴ではなく、家の構造でサンゴを分類し、研究が進められている。

 

珊瑚の種類:

 

素人レベルで、ものすごく大きくサンゴを3つの種類に分けると、

1. 大昔に繁栄し、すでに地球上から姿を消してしまった四放サンゴや床板サンゴ(化石サンゴ

2. 指輪やネックレスに加工されている宝石サンゴ(八放サンゴ

3. サンゴ礁そのものを造っている 六放サンゴ となる。

 

八放(宝石)サンゴ は、水深100−400mの深い海底に根を下ろし、

プランクトンを食べて内部に骨格を作りながら増殖、樹枝状の集合体を形成する。

8本の触手を持ち、通常の動物と同じく捕食によって生きるため、光を必要としない。

八放サンゴが死ぬと、外部の組織が腐敗し、残った骨格が本サンゴといわれる宝石となる。

環境変化に乏しい深海に生息するため、成長は比較的遅い(青サンゴは早いけど)

ソフトコーラルとハードコーラルを形成する両方の種類がいる。

 

六放サンゴ が今回の主役

六放サンゴは、珊瑚礁を構成するサンゴ 

イシサンゴ、造礁サンゴともいわれ、18-30℃ 温暖で浅い海に住む。

通常6の倍数から構成されている触手(隔膜や隔壁)をつかって、流れてくるプランクトンを捕まえて食べる。

 

しかし、この生き物、プランクトンの栄養だけでは生きていけない。

自分の体内で共生する 褐虫藻(かっちゅうそう) という直径0.01ミリほどの 単細胞の藻類 の力が不可欠なのだ。

褐虫藻は石灰質を生成するカルシウムの骨格をもつ海藻

サンゴはこの褐虫藻が 光合成 で生成してくれた有機物を栄養として取り込んで生きている。

六放サンゴは、光合成を行える光の届く 水深30m以下 のところでしか生息できないため、

珊瑚礁は浅い海にしか形成されない。

また、プランクトンが少なく、海水の濁りがすくない(貧栄養)というのも重要な条件。

濁っていると、光合成が十分に行えず、プランクトンがサンゴの生育に必要な酸素をうばってしまうからである。

 

一方、サンゴと共生関係にある褐虫藻は、サンゴの老廃物を養分としている。

褐虫藻は、サンゴの食料生産と排泄(はいせつ)物処理を同時に行ってくれる存在というわけ。

 

ちなみに、サンゴの家の色は、褐虫藻の色。

サンゴ固体にいろいろな色があるわけではなく、体内に飼っている 褐虫藻の種類 で色がきまる。

 

 

サンゴの生殖:

 

サンゴの生殖は、産卵と分裂の2つの方法がある。

サンゴから放出された卵と精子の塊りが海中で受精、

または、珊瑚体内で受精・放出された幼生(プラヌラ幼生)が、海中を漂い、

条件に恵まれた場所にたどり着くと、そこで定着して珊瑚礁が形成される。

群体性のサンゴは、無性生殖で分裂して増えることもできる。

分裂をくりかえし、成長・結合しあって、珊瑚礁がどんどん大きくなっていく。

比較的成長が早い造礁サンゴが1年間に成長するサイズは、枝サンゴで1cm テーブルサンゴで500円玉 の大きさ程。

巨大な珊瑚礁を形成するには、長い長い年月がかかっているのです・・・・。

 

 

珊瑚の敵:

 

・ 天敵No.1 オニヒトデ

・ ヒメシロレイシガイダマシ

 

こいつらとの戦うためのサンゴの武器は、スイーパー触手。

プランクトンを捕食するための触手とは別にある、

長いニョロニョロしたスイーパー触手を振り回して相手にぶつけて追い払うが・・・。 敵は強しorz

 

・ 食用魚の イラブチャー(ブダイ)
イラブチャーは丈夫な歯でサンゴを家ごとガツガツと食べてしまうつわもの

ガツガツと食べたあとの食べ残しや、フンとなって排出された細かい砂はサンゴ礁に積もり、

長い年月をかけて、サンゴ岩となってあたらしいサンゴが着床、珊瑚礁として復活したり、

砂浜や海中の砂となり、砂地に住む生き物達に生きる場所を提供したりするので、一概にサンゴの天敵とはいえない。

 

 

珊瑚の味方:

 

・ アカホシサンゴガニ

サンゴの枝の中で暮らす体長1cmの小さなカニは、

サンゴを食べるオニヒトデなどがやって来ると、武器のはさみで戦うサンゴの強い味方★

オニヒトデは自分の針が2,3本切られただけで、逃げていってしまう

 

 

サンゴのウ○チ:

 

体内に住んでいる褐虫藻がサンゴの排泄物を養分としているが、

褐虫藻からの老廃物はサンゴには利用できないため、体外へ排出する必要がある。

サンゴには穴がひとつしかないため、食べる所、排泄する所、子供を産む所は全部一緒。

ある程度たまったところで、ぺレット状に丸く固めて、家の外へ放出します。

 

 

珊瑚礁の役割:

 

全海洋面積のたった 0.1〜0.2%程度 にしか形成できない珊瑚礁

その中に、海の魚類種の 4分の1 (動物50万種 植物1.5万種)が生息する。

地球最古の生態系といわれ、 約5億年の歴史 があり、

地球上での単位面積当たりに生息する生物の種類が最も多い場所のひとつ。

気の遠くなるような長い時間をかけて、複雑、かつ独特、巨大な生態系を発達させてきたのである。

ちなみに、人間の食用魚漁獲量の10分の1が珊瑚礁の海の産物。

 

珊瑚礁は 命をはぐくむ だけでなく、地球の二酸化炭素の量をコントロール している。

一説には、褐虫藻の光合成によりコントロールしている二酸化炭素は、

地球上の総二酸化炭素量の65〜70%であるといわれている。

珊瑚礁は地球の温暖化を食い止める大きな役割を果たしている。

 

しかし、近年の急激な珊瑚礁の減少は、すべての生物にとって大きな脅威である。

すでに全世界で10〜20%の珊瑚礁が死に絶え、現在もその減少速度は加速している。

これには海水温の上昇や、陸地からの土壌流出、洗剤等の化学物質による海水汚染が

大きく関係していると考えられている。

 

 

白化現象:

 

珊瑚が色あせて白っぽくなる現象。

造礁サンゴは、環境変化が激しい浅い海域に住んでいるため、宝石サンゴよりは水温や環境異常に強い。

しかし、海水温が 2℃ 高くなってしまうと、褐虫藻が珊瑚から出てしまって色が抜け、珊瑚の色が白くなってしまう。
サンゴが白化した後、2週間ほどは何とか生きていかれるが、

そのまま褐虫藻が珊瑚に戻らないと、珊瑚は栄養をもらう事が出来ずに死んでしまう。
珊瑚の生息に適した水温は
25〜29℃ (生息可能な水温は18-30℃)

海水温が低すぎたり高すぎたりしても褐虫藻は抜け出し、サンゴが白化する。

 

 

海水温が上がれば、サンゴが死滅し、珊瑚礁が減ると、空気中の二酸化炭素が増え、地球の温暖化がすすむ

温暖化が進めば、異常気象などを引き起こし、また海水温が上昇する。

悪いほうへ悪いほうへと歯車が回り始めてしまう。

サンゴと地球の水温、気温とは密接な関係があるのだ。

 

珊瑚礁は、地球の環境を守り続ける“海の中の森”であり、

すべての生命体が珊瑚礁から受ける恩恵は計り知れない。